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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


「おいおい、決めつけんじゃねえよ。俺たちじゃ、あいつらに勝てねえってのか?」
「……言葉は悪いが、そっちの戦力は女が二人、だろ?あんたらの細腕で風間や天霧、不知火と渡り合えるとは、思えねえんだがな」
「何より、よそ者が僕たち新選組の内情に口を出さないでほしいよね」

彼らの言葉に、お千ちゃんも君菊さんも困惑していた。
自分たちの言葉に賛同しない彼らに、どうやって説得しようかと悩んでいるのかもしれない。
すると君菊さんは土方さんへと視線を向けた。

「……土方さんは、どうお考えですか?風間たちの力を承知しているあなたなら、姫のお話、おわかり頂けるのではありませんか?彼女たちを、こちらに渡してくださいな」
「それとこれは、話が違う。鬼ごときに恐れをなして、一旦守ると決めた相手を放り出すってのは、俺たちのやり方じゃねえんだ」

土方さんの目は鋭くなっていた。
そして彼の言葉を聞いた君菊さんもまた、目が鋭くなり眉を釣り上げている。

「それに、あんた方が鬼だってのは百歩譲って認めてやってもいいがーー。だからって別に、あんた方を信用したわけじゃねえからな」
「……ずいぶんな物言いですわね。千姫様は、鈴鹿御前様の血を引くーー」
「お菊、おやめなさい。今は、そのようなことを言っている時ではありません」

お千ちゃんは穏やかに、しかし反論を許さない態度で制止した。
彼女の言葉は本当にやんごとなき身分のお姫様のようであり、町で会った時とは別人のようだ。

そして、【鈴鹿御前】という言葉である事を思い出した。
幼い頃、まだ本当の両親が生きている時に昔話を聞かせてくれた事がある。
遥か昔、鈴鹿山に住んでいたと言われる女鬼であり、坂上田村麻呂に敗れた後は、彼を慕い京の八瀬に移り住んだと。

そして八瀬の里には、鬼の中でも古い血筋を持ち、その鈴鹿御前の末裔がいる【八瀬の里】というのがある。
八瀬の里の頭領は、代々女鬼が勤めていた。
彼女たちは【八瀬姫】と呼ばれていて、恐らくお千ちゃんはその八瀬姫なのだろう。

(鬼の代表とも言える、八瀬の鬼……)

ふと、そのことを思い出していればそれまで静かに話を聞いていた山南さんが口を開いた。

「私も、土方君に同意します。……もし彼女たちが人と違う生き物の血を引いているのだとすれば、今後、色々とご協力願いたいこともありますしね」
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