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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


「この国には古来より、【鬼】という生き物が住んでいました。幕府や、諸藩の高い位にある者は皆、知っていたことです」

ああ、やっぱりなと私は思った。
彼女はやっぱり【鬼】についての話を始めて、私は眉を下げながら視線を床へと落とす。

「ほとんどの鬼たちは人間と関わらず、ただ静かに暮らすことを望んでいました。ですが……鬼の強力な力に目をつけた時の権力者は、自分たちに力を貸すように求めました」
「鬼たちは……それを受け入れたの?」
「多くの者は拒みました。人間たちの争いや、彼らの野心に、なぜ自分たちが加担しなければならないのかと。ですが、そうして断った場合、圧倒的な兵力で押し寄せてきて村落を滅ぼされることさえあったのです」
「ひどい……」

お千ちゃんの言葉で、徐々に嫌な忘れ去りたくても忘れ去ることができない記憶が蘇ってきた。
身体は小さく震え始め、私は袴を力強く握りしめながら唇を噛み締める。

これ以上は聞きたくない。
なにも思い出しくないと思いながらも、私は動けずにいた。

「鬼の一族は次第に各地に散り散りになり、人目を避けて暮らすようになりました。人との交わりが進んだ今では、純血に近い鬼はそう多くはありません」
「それが、あの風間たちだと言うことかな?」

近藤さんの問に、お千ちゃんは静かに頷いて見せた。

「今、西国で最も血筋が良い家といえば、薩摩藩の後ろ盾を得ている風間家です。頭領は、風間千景」
「風間千景……」
「そして、東国で最も大きな家はーー雪村家。あなた達の家よ、千鶴ちゃん、千尋ちゃん」
「えっ……!?」

千鶴は、突然家名を出されたことで驚いていた。
だけど私は驚くことはなく、そんか私を見た千鶴は更に困惑していた。

「雪村の鬼たちが隠れ住んでいた里は、人間たちの手によって滅ぼされたと聞いています。ですが、彼女たちは雪村一族の生き残りではないか……。私は、そう考えています。千鶴ちゃん、千尋ちゃん。あなた達には、特別に強い鬼の力を感じるの」
「そんな……だって、私は……」
「わかる限りではあるけど、お菊にも、あなた達の家の事を調べさせたわ」
「信じられぬのも無理はありませんが、まず間違いないかと」

するとお千ちゃんは私へと視線を向けてきた。
眉を下げながら、少し口を噛み締めるようにしていたけど、やがてゆっくりと開いた。
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