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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第8章 軋み【土方歳三編】


伊東さんに三木さん、そして斎藤さんと平助君がいなくなって数日。
あれから屯所はやけに広くなり、ずいぶんと静かになってしまった。

また、時を同じくして幹部隊士の武田観柳斎さんも新選組を脱退した。
彼は御陵衛士に向かうのではなく、ただ脱退してしまったのだ。

(だんだんと、仲間だった人達がいなくなり……それぞれの道を歩んで行く)

それぞれの道を歩んでいくのは悪い事じゃない。
だけど、どうしても彼らが居なくなってしまうと寂しくなってしまうのだった。

「土方さん、お茶を入れましたので休憩なさってください」
「……おう、悪いな」

斎藤さん達が居なくなってから、人手が減ったせいか土方さんは前よりも忙しくしている。
時折、また食事を抜こうとしたり休憩をしないので無理やり休ませたりしたいる状態。

「……静かだな」

湯呑みを手にして口にする前に、土方さんはぽつりと呟いた。

「馬鹿三人が騒がなくなったせいで、やけに屯所が静かになりやがった」
「……そうですね」
「……こんな静かさにも何時か慣れるか」

土方さんはそう呟くとお茶を口にした。
斎藤さん達が居なくなってから、土方さんから彼らの名前を聞いたことはほとんど無い。
だけど時折、彼はこうしてつぶやく時があった。

なんだかんだ、やっぱり土方さんも寂しいのだ。
静かになってしまった事や、あの頃の賑やかさが無くなってしまった事が。

「……雪村。茶のおかわりをくれ」
「珍しいですね、おかわりするの」
「喉が渇いてんだよ。それに、お前の淹れる茶は美味いからな」

その言葉に少しだけ目を見開かせた私だが、直ぐに嬉しくなって土方さんから湯呑みを受け取った。

寂しさに落ち込む時はあるけれども、時折だけど土方さんが私の事を褒めてくれて元気をくれる。
分かっていて褒めてくれているのか分からないけれども、それがとても嬉しかったーー。
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