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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第8章 軋み【土方歳三編】


「永倉君、かなり苛立っているね」
「……そうですね」

言葉からして、平助君と斎藤さんは何も相談せずに脱退することを決めたようだ。
そのことに永倉さんと原田さんは苛立っているみたい。

広間は一気に静かになり、それがとても寂しく感じてしまう。
何時も賑やかになる朝食の光景がそこにはない。
ただ静まり返り、息苦しさも感じる重い空気だけが流れていた。

「……それにしても、まさか伊東さんが雪村君までを連れて行こうとするとは思っていませんでした」
「ああ、私も驚いたよ。前から千尋君をかなり気に入っていたのは知っていたがね……。だが、前からたまに『自分の小姓にしたい』とは言っていたみたいだよ」
「そう、だったんですね……」
「だが、お前を連れていこうとしてるのは裏がある筈だ。わざわざ俺の小姓だと知っておいて欲しいなんざ言うなんてな」

確かに裏があるかもしれないけど、伊東さんの考えがなぞだった。
何で私をそこまで気に入っているのだろうと思っている時だ。
足音が聞こえて広間の襖が開いた。

「……千鶴、おはよう」
「千尋、おはよう」
「おや、千鶴君。もう起きて大丈夫なのかい?」
「はい。ぐっすり眠りましたから、もう平気です。それより千尋、起きた時横に居なかったから驚いたけど、もう大丈夫なの?」
「うん、大丈夫だよ。心配かけちゃってごめんね」
「そっか……」
「千鶴は、傷は平気なの……?」

多分、傷は治ってはいるはず。
だけど深さによっては中々治らない時もあるので、一応聞くと千鶴は静かに頷いた。

「傷は、見た目ほど深くはなかったよ」
「それなら、良かった」
「ええ、本当に良かったです。しかし、災難でしたね」
「はい。それよりも……今そこで伊東さんたちに会ったんです。でも、様子がいつもと違っていて。……もしかして、何かあったんですか?」

千鶴の質問に、井上さんと島田さんは困った表情をして顔を見合わせていた。
私と少し戸惑いながらも、眉を下げていれば千鶴は不思議そうな表情を浮かべる。

「……そうか、会ったのかい」
「伊東さんも三木さんも、なんだか意味深なことをおっしゃってたんです。平助君や斎藤さんの様子も。いつもとは違う感じで……」

井上さんと島田さんと顔を見合わせてから、島田さんが少し考えた後で、千鶴に説明を始めた。
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