第2章 新選組【共通物語】
ー文久四年・一月中旬ー
障子を開ければ、冷たい肌を刺すような空気が部屋に流れてきた。
息を吐けば白い息が溢れて、両手で腕を摩りながら部屋を出ると、隣の部屋へと向かう。
「千鶴、おはよう」
「おはよう千尋。今日は、昨日より少し肌寒いかもね」
「そうだね。風邪ひかないように、羽織は着ておいた方がいいよ」
私と千鶴が、この新選組の屯所で暮らし始めて早くも一週間が過ぎようとしていた。
その間私たちには専用の部屋が与えられて、各部屋から出ないように言われている。
だが千鶴の部屋に行ったり、千鶴が私の部屋に来たりするのは許可が出た。
不便なのは不便だが、殺されるよりはマシなのかもしれない。
でも、この状況は半分軟禁状態……いや、監禁状態なのかもしれないと考えてしまう。
「なんだか、ずっと男装したままと言うのは……やっぱり不便かも」
「確かに、そうだね……」
私たちが処遇が決まった、あの日の夜。
「おまえ達の身柄は、新選組預かりとする。が、女として屯所へ置くわけにゃいかねえ。新選組にかくまわれている女たちが居るーー。そんな話が万一にも広まれば、よくねえ勘繰りする奴もでてくる。それに、噂を聞いて綱道さんを狙っている奴らが、おまえ達まで狙いだすかもしれねえ」
その言葉に、また不安が溢れ出してくる。
私は狙われてもいい……いや、よくない。
狙われてしまえば、傍で千鶴を守れなくなるから狙われたくはないものだ。
「……もちろん、綱道さんが狙われていると確定したわけじゃねえがな。こういう不確定要素が多い現状で、うかつな行動は取れねえってことだ。だから、おまえ達には男装を続けてもらう。……面倒だろうが、それでいいな」
「……はい」
「はい、分かりました……」
不便だと思ってしまうが、新選組の人達は自分たちの事を優先しつつも、私と千鶴と父様の安全も考えてくれている。
だから、従わない理由はない。
「それに……例え君たちにその気がなくとも、女性の存在は隊内の風紀を乱しかねない。ですから私たち幹部の他、隊士たちへも君たちの事情は話しません。情報はそれこそ、どこから広まるかわかりませんからね」
「状況はよくわかりました。それで、私たちは何をすれば……」
「屯所じゃ何もしなくていい。部屋を二人ともひとつやるから引き籠もってろ」