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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第7章 混沌【土方歳三編】


突然現れた永倉さんに、相馬君と野村君は固まって沈黙してしまう。
そんな彼らに、永倉さんは不思議そうにしている。

「どうした?やりたくないのか?」
「…………は、はい!お願いします!」
「いや、俺はちょっと……仕事が……」
「おいおい、新人が遠慮なんてするなよ」

どうやら、二人は永倉さんとの稽古はあまり好んではいないらしい。
表情からそれを察して、私と千鶴は苦笑を浮かべていれば、相馬君は諦めたように野村君に小声で話しかけた。

「野村……あきらめろ。これも立派な隊士になるための試練だ」
「試練っていうか、あれはしごきだろ……」
「そんじゃ、ちょっくら二人を借りていくぜ!」
「は、はい……!二人をよろしくお願いします」
「あの、怪我は無いようにお願いしますね」

相馬君は諦めた様子であり、野村君は涙目で私と千鶴に助けを求めている。
だけど、二人は永倉さんに引き摺られる形で連れて行かれてしまった。

「……永倉さん、稽古というよりもしごきらしくて、新人隊士の方たちに嫌がられるみたい」
「……厳しいもんね、永倉さんの稽古」

私たちは苦笑を浮かべながら、相馬君と野村君が怪我をしないよに祈る事にした。

お昼が過ぎた頃。
私と千鶴は掃除をする為に中庭に向かえば、そこでは沖田さんが相馬君と野村君の稽古を付けていた。

「ぐあっ!?」
「いってぇっ!?」
「……ひょっとしてもう終わり?あーあ、二人ともてんでダメだね」

相馬君と野村君は、永倉さんの稽古が終わった後に沖田さんに稽古を付けてもらっていたらしい。
そして、彼らは沖田さんの攻撃をまともに喰らって地面に転がっていて、沖田さんはそんな彼らを見ながら木刀を置いてため息を吐く。

「あの、沖田さん。今のは少しやり過ぎじゃ……?」
「二人とも、永倉さんの稽古を受けた後なのでもう少し優しく……」
「稽古をつけて欲しいって言ったのは、相馬君と野村君のほうでしょ。仮にも新選組の端くれだったら、このぐらいの一撃は避けてくれないと」

かなりの無茶な事を言っているけど、私と千鶴はそれを言えずに黙っていた。
しばらくすると、倒れていた二人はやっとのことで身を起こす。

「いってて……!沖田さん、ちょっとは手加減してくださいよ!」
「へえ……野村君が戦場で戦う敵は手加減してくれるんだ?ずいぶんと優しいんだね」
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