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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第6章 宵闇【土方歳三編】


鋭さを纏った空気が流れ、私は思わず息を飲んでいた。
今すぐにでも、争いが始まりそうな空気感であり、私は目眩を消すために軽く頭を振る。

(目眩ぐらいで、こんな事になってる場合じゃない。私の役割は、千鶴を守ることだ……)

刀の柄を更に強く握り締めた時だった。
視界の横で、黒いものが動いてから声が聞こえてくる。

「副長たちの心配は無用だ」
「山崎さん、いつの間に……!」
「山崎さん……!?」
「……副長の命令だ。君たちは、このまま俺が屯所に連れて行く」

千鶴は、山崎さんの言葉に少しだけ眉間に皺を寄せていた。

「ここから逃げろってことですか?」
「その通りだ。君たちがここにいても、できることは何もない」

確かにその通りかもしれない。
だけど、私はこの場から逃げてはいけない気がするのだ。

「山崎さん。千鶴だけを連れて行ってください……私はこの場に残ります」
「……雪村君。君は、状況を理解していない。君は多少は剣の心得はあるが、ここに残って何ができる?」
「……これが、賢い選択ではないのは理解しています。ですが、私はこの場から去ることは出来ません。なので、千鶴だけを連れて行ってください」

あの者達がなぜ、私たちを連れていこうとしているのか
その理由を聞かなければならない。
千鶴を守るのは私の役目だけれども、千鶴を連れていこうとする者たちの理由を知るのも役目だろう。

千鶴を守らなければいけない。
だが、山崎さんがいるのなら多少は安心できる。
私よりも彼の方が強いのだから。

「……君にも、譲れない理由があるのだろうな。だが、それは俺も同じこと。副長の命令を遂行するーー、それが俺にとって己を貫くということだ」
「ですがーー!」

山崎さんの言葉に反論しようとした時だ。
不意に、銃特有の動かした時に鳴る音が聞こえてそちらへと視線を向ければ、不知火匡が山崎さんへと銃を向けていた。

「ヘイヘイ、待てって。お姫さんは、ここに残るっつってんだろ?振られたのに邪魔してんじゃーーねェよ!」
「ちっ!」

原田さんは小さく舌打ちをすると、手に持っていた槍で不知火匡の心臓目掛けて、槍を穿とうとするが簡単に避けられてしまう。

「……時に拙速は巧遅に勝りますが、不知火の手の早さも考え物ですね」
「そういうあんたも、止めなかったようだが」
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