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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第6章 宵闇【土方歳三編】


「待ってくれ、近藤さん。総司は、今回は外してやってくれねえか」
「む、なぜだ?」
「何でも、風邪が治らねえとかでな。……養生しろって散々言ってるのによ」

そう、土方さんの言う通り、沖田さんの風邪はなかなか治らないのだ。
あれからよく咳き込んでいる姿を見かけて、私や千鶴や土方さんが【養生してほしい】と頼んでいるのに聞いてくれない。

「本当か?大丈夫なのか、総司」
「大した風邪じゃないんですけどね。土方さんは、大袈裟なんですよ」
「何言ってやがるんだ。さっき咳してただろうが」
「それ、薬を売りつける為の口上ですか?何を言われても、石田散薬は買いませんよ」
「……そんなんじゃねえよ。いいから、言う通りにしろ」

石田散薬とは、土方さんのご実家が作られているお薬らしい。
平助君に聞いたところ、凄く不味いし効かないとのこと。

だけども、沖田さんにはお薬を渡したりしたけれどもやはり治った様子がない。
もしかしたら、風邪ではなく別の理由があるのかなと考えている時、意外な人物が手を挙げた。

「ん、平助、どうしたんだね?何か、気になることでもあるのか?」
「あのさ……近藤さん、実はオレもちょっと調子が……」
「何だ、平助も風邪か?気を付けないといかんぞ。折角の晴れ舞台、全員揃って家茂公をお迎えしたかったのだがなあ」
「…………すいません」
「あ、いや、責めたわけではないんだ。体調は大事だからな。いずれまた機会があるであろうし、二人にはその時、存分に働いてもらいたい」

やはり、平助君は江戸から戻ってきてから様子が少しおかしいのだ。
元気ではあるけれど、ふとした瞬間に複雑そうな面持ちをしている時がある。

(体調を聞いた時は、【大丈夫】って言ってたけど……本当に大丈夫かな)

その後、近藤さんと土方さんは、二条城での警護の為に隊の編成を始めた。
だが、ふと私たちにある問いかけが投げられる。

「そういや雪村たち、おまえらはどうするんだ?」
「え?」
「は?」
「二人揃って呆けてるんじゃねえよ。おまえらは警護に参加するのかって聞いてんだ」
「私たちも……、参加していいんですか?」
「無論、構わんとも」
「あらあら、千尋君も是非参加しなさい」

近藤さんの言葉に重ねるように、伊東さんが私に微笑んできた。
あれから、伊東さんは以前よりも私に声をかけるのが多くなっている。
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