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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第5章 戦火【土方歳三編】


土方さんの背中を見送ると、私は隣の部屋の前まで足を進めた。
中にいる千鶴は恐らく眠っているだろうか、起こさないようにと慎重にふすまを開ける。

部屋の中は暗い。
でも、月明かりが部屋の中を少しだけ明るく照らしていて眠っている千鶴の姿が見えた。

(……よく、寝てる)

その姿を確認してから、またゆっくりとふすまを閉めてから自分の部屋に戻った。

「ふう……」

近藤さんと斎藤さんに続けて稽古を付けてもらった為、身体は疲れを訴えていた。
そして部屋に戻ってきたせいなのか、緩やかに眠気が訪れる。

「寝坊しないように、もう寝よう」

布団を敷いてからその中に潜り込む。

(そういえば、今日の稽古の後、近藤さんに門弟だって言ってもらえた……)

ここに来てからは疎外感を感じていた。
当たり前だけど、私や千鶴は新選組の隊士じゃない。
父様を見つけるまでの居候であり、彼らの仲間じゃないと感じることは多々ある。

「だからこそ、嬉しかったなあ……」

近藤さんの言葉は凄く嬉しかった。
私も少しだけ、仲間になれたような気がして嬉しくて仕方がない。
そう思っていた時だった。

『千鶴を守るため、いついかなる時も警戒しなさい。周りの人間に気を許してはいけないよ』

ふと、父様の言葉を思い出した。
小さい頃からよく言われ続けた言葉に、私は眉を下げながら布団を握りしめる。

「……警戒、しないと」

まるで呪縛のように、父様の言葉が脳内に響き渡る。
その声から逃げるように、私は目を閉じて深い眠りについたのだった。
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