第6章 あなたは私の何を知っているの?
悟はしずくのため息を感じると顔を顰める。
ああ駄目だ。
こんな態度は余計に悟を煽るだけなのに。
そう分かっているのに、悟と過ごした10年の月日がしずくを素直にさせてくれそうに無い。
「……僕は少し勘違いをしていた様だ…。」
しずくの態度に悟は顔を顰めたまま話始めた。
「僕らが10年間喧嘩をしなかったのは、僕の心が寛大だったからの様だ。」
「はぁ?!」
悟の言葉に、しずくは思わず声を上げた。
何を悟った様に言っているのだろう。
「私達の10年が安泰だったのは、私が悟に寛大だったからよ!」
思わず喧嘩越しに悟に言った。
そう言ったしずくの言葉に嬉しそうに笑う悟に、しずくはしまったと思った。
悟はしずくとの今のこのやり取りを楽しんでいるのだ。
しずくを抱いて、今までの夫婦生活に物足りなさを感じていている悟がやりたいのは、こうしたしずくとの本音のぶつかり合いの様だった。