第2章 離婚して下さい
本当に自分が何の不満も無く、10年夫婦をしてきたと思っているのだろうか。
いや…本気で思っているのだろう。
だって悟はしずくに興味すら無いから、そんな事に気付くはずも無い。
そして、夫婦だった事も無いだろう。
「………………。」
しばらく続いた沈黙の後、話し出したのはしずくの方だった。
「結婚して毎日夕食を作っていたわ…。」
しずくの言葉に悟は目をピクッと動かした。
毎日食べていないからだ。
いや……ほとんど食べていない。
「あなたはいつ帰ってくるかも分からなかったから、毎日作って……
食べなかった夕食は次の日に私が3食で食べ切ってるわ…。」
「……帰る時は連絡する様にするよ…。」
悟がそう言ったのを聞いて、しずくは目を細めた。
「…この10年あなたはとても過ごしやすかったでしょう?
煩わしい本家からの連絡が来るのも私で、子供が出来ないと小言を言われるのも私で……。
知ってる?本家じゃもうとっくに離婚の話は出ているわ。
あなたにはもっと若い奥さんが来るそうよ。」