第5章 デートくらい出来ます
五条悟は誰も愛さない。
それは自他共に認める事実だから。
「…酷いな…。」
しずくの言葉を聞いて、悟はポツリと呟いた。
その表情は少し目を伏せていて、少し寂しそうだ。
「それを分かってて結婚してくれるって……。
10年一緒に居たのに、結局愛されたいだなんて。」
今さらそんな事を言って離婚しようと言うのだから。
「愛さないのと、関心が無いのはまた違うよ…。」
悟は愛せなかったのでは無くて、しずくに関心が無かった。
それだけの事だった。
それでも情はあるし、この10年は本当に過ごしやすかったと言ったら。
それはまた自分勝手な感想なのだろう。
お互いに進むべき道が違えて、方向性は決まっている。
それならキッパリ別れて別々の道を進むのが『面倒くさく』ないのだろう。
「……………。」
しずくは俯きながら動かない悟をしばらく黙ってみていた。