第4章 あなただけは絶対に嫌なんです
しずくのその芽生えた小さな恋心は邪魔だった。
今のうちに。
最初から潰してしまえばきっと無かったことになる。
そしてしずくはそれに従い、順応な悟の妻になると確信していた。
だから悟は初めての夜も、しずくにキスはしなかった。
悟が初めての相手だったから、しずくは悟に導かれるままにその体を委ねた。
悟はしずくの体は丁寧に扱ったはずだ。
ただしずくの体が傷付かない様に。
SEXが苦しみにならない様に。
それだけを気遣って、しずくの恋心には蓋をした。
そして10年。
しずくは悟が思い浮かべていた悟にとって完璧な妻になってくれた。
そんなしずくが今さら恋がしたいと。
離婚を突き付けてきたのは、悟にとっては裏切られた気持ちだ。
手を口元に置き悟は考えた。
なら。
しずくが恋をしたいというのであれば。
その相手は自分でいいはずだ。