第4章 あなただけは絶対に嫌なんです
ああ、だけど。
胸の内の全てを悟に話すのは不快だ。
どうせこの男に恋愛をしたいと言ったとて、理解出来ないのだから。
「……………………。」
しずくは何も言わないで顔を晒すと、そのまま自分の部屋に入って行った。
悟ももう、それ以上はしずくを止めなかった。
「…………………。」
しずくの情欲を満たせば、この話はもう終わりだと思っていた。
終わらないしずくの欲望に顔が歪みそうだ。
本当にしずくは恋愛がしたいというのだろうか。
悟はソファに座り直すと、足を組んで姿勢を崩した。
そして右手で軽く頭を支えて、しずくとの10年を思い返す。
初めてしずくを見た時に、目が合ったしずくの表情は今より豊かだった。
口数は少なかったが、悟と目が合い顔を赤らめた当たり、アレがしずくの初恋なのだろう。
「………………。」
悟はそれが分かっていた。
だから敢えて無視した。