第4章 あなただけは絶対に嫌なんです
それなのに…キスをして欲しいなどと馬鹿な事を言った。
結婚が決まった時から、ずっと悟の唇に触れたかった。
悟にキスをされて触れられる時間はどんなモノなのか。
ずっと夢見ていた。
「……そんな感情とっくに無くなったと思ってたのに……。」
それなのに悟にキスをされて彼が気付いていないのをいい事に、悟で情欲を満たしたいと、必死になって彼に縋った。
しずくの目からツーっと涙が溢れた。
夢にまで見た悟とのキスはどうだったか。
悟に満たされたかった情欲はどうだったか。
そんなのは、ただ虚しくて傷を抉るだけだった。
悟は離婚しない為に必死なだけで、しずくを愛していない。
分かっている。
ずっと分かっている現実が、こうして何度もしずくを傷付ける。
(…悟の愛は求めないと、あの時に決めたはずなのに…。)
離婚する前に、一度はこうして抱かれたかったのかもしれない。