第3章 今夜不貞を働きます
いつも香るしずくの匂いではなかった。
ちゅっ…ちゅっ…。
何度も唇を擦らせてしずくの口の中に舌を入れ、逃げる舌に絡み、口内を舐めた。
確かにここ最近、こんなキスをした記憶が無い。
少し唇を離してしずくの顔を見下ろした。
しずくは見たことのない位に顔を染め、少し開いている唇は今のキスで潤んでいる。
「……気持ちいい…です……。」
そう囁く様に言ったしずくに、悟は苛立ちを覚えた。
恋がしたいとか言っていたって、結局はただの欲求不満だっただけじゃないか。
少し真面目に考えていた自分がバカらしくなった。
この情欲を解消してやれば、また元通り従順な妻に戻るのだろう。
(……なら望み通りに……。)
満足させてやればそれでいいはずだ。
悟は再びしずくの唇を塞ぐと顔を撫でていた手を、そっと胸に移動した。