第15章 最終章
しずくが呆然とその光景を見ていると、再びガバッと悟がしずくを抱きしめた。
「…しずく、ありがとう…。」
悟の小さな声が耳元で聞こえた。
「僕に家族を作ってくれて、ありがとう。」
『欲しいの?子供。』
『今さら父親になって、家族ごっこがしたいか聞いているのよ…悟。』
そう聞いた時の、面倒くさそうな悟の顔を今でも覚えている。
あの時とは全然違う悟の言葉に、しずくも思わずポロッと涙が出た。
震えている悟の肩に手を回した。
「…おかしいね…しずく、僕は何で泣いているのか分からない…。」
込み上げてくる愛しさが何なのか、言葉に出来なかった。
でも大丈夫だ。
それはしずくが教えられる。
「…悟…それはね…『幸せ』って言う感情だよ……。」
ぎゅうっと悟を抱き締めて、悟の耳元で囁いた。