第15章 最終章
「……帰るのはいいんだけど…。」
しずくはスッと悟を離すと、鞄の中から写真を出した。
「私、1人じゃないけどいい?」
しずくが差し出した写真は、ペラペラで、白黒の写真には中心に白い丸っとした被写体が写っていた。
それが『赤ちゃん』だと気付くのに、随分と時間がかかった。
「ゲームも賭けも、悟の勝ちよ。」
そう笑って言ったしずくの手元の写真を、目を見開いてずっと悟が見ている。
「…………。」
まるで時間が止まった様に動かない悟に、しずくは不安になった。
妊娠した事を伝えるのはまだ早かったかな…。
そんな風に思っていると、しずくの肩を掴んだままの悟の手が震えているのが分かった。
「!?」
チラッと悟の手を見て、もう一度見た悟の顔に、しずくは驚いてビクッとなった。
悟は大きく目を見開いたまま、ポロポロと涙を流していた。
泣いているのだ、あの五条悟が。