第15章 最終章
しずくは俯いて、力無く笑った。
多分、今の悟にはこれが限界なんだろう。
彼に愛を教えるには、まだまだ時間が必要な様だ。
でも、今はそれでいい。
『私達』には、これから時間がたくさんあるのだから。
しずくはスッと立って、部屋の中に入って行った。
そして鞄を持ってくると、悟の目の前に立った。
「……いいわ、戻ってあげる…。」
しずくが笑ってそう言って、一瞬悟は驚いた様に目を見開いた。
「……もう離婚って言わない?」
「言わないわ…。」
しずくのその言葉を聞いて、悟はやっと安堵の笑みが出た。
「しずく!」
ガバッと悟に抱き付かれて、しずくは小さく悲鳴を上げた。
「絶対後悔させないから!もっと僕を好きにさせるし、僕もしずくを大切にする!」
ぎゅうっと抱き締めてくる悟が、まるでプロポーズをしている様でしずくは微笑んだ。