第15章 最終章
五条悟の代わりに、自分が彼女の笑顔を取り戻せると思っていたんだ。
だけど結局。
その役目は自分では無かった様だ。
涙を七海に見せない様に俯いて泣くしずくを見て。
七海はそんな事を思った。
悟を愛したままのしずくだって、受け入れる自信はあった。
だけど、残念な事に、目の前のしずくがそれを望んでいなかった。
柄にも無い事をしない方が良かった。
そう思いながらも、後悔は無く、やっとしずくへの思いを手放せそうな。
そんな気持ちで、七海は席を立った。
「…幸せになってください…。」
その幸せが、自分が与えるモノでなくても。
心からそう思えた。
「……はい……。」
最後はそう頷いてくれたしずくの顔を見て、七海はそのまま背を向けて歩き出した。
勝算はあったんだ。
悟があんなだから。
だけど…何に負けたのだろう。
その答え合わせは、今では無くて、もっと心の傷が癒えてからしようか……。