第15章 最終章
「素敵な時間をありがとうございました。
ちゃんとした恋愛は七海くんが初めてです。」
しずくはしっかりと七海の顔を見て笑って言った。
泣きそうになるのを堪える為に、下瞼が震えている。
ーあの日、悟の元にしずくを置いていかないで、自分が抱いていたら何か変わっていたのだろうか。
普段呪術師をやっていて、たらればは命取りになる。
そんな考えは自分を諌めるはずのモノなのに。
今はその考えに後悔して、目の前のしずくに気持ちを抑える事しか出来なかった。
「…あなたをずっと好きでした。」
10年前に、悟の婚約者になる前からずっと。
まだ高専の時に、初めて会ったしずくを思い出す。
お互いまだ1人立ちするにはまだ未熟で、その背中を支え合った。
呪いを祓った後の、しずくの笑顔を思い出す。
久しぶりに会ったしずくにあの頃の笑顔は無かった。