第15章 最終章
そんな筈は無かった。
確かに七海に恋をして、彼に抱かれる事を夢見た。
だけど、悟が好きだと自覚した以上。
それを七海に伝えても、余計傷付けるだけでは無いか…。
しずくは顔を上げて七海を見た。
いつもの様に、真っ直ぐ見てくる七海に、しずくは目を細めた。
「……七海くんに、恋してた…。
楽しくって…、七海くんに抱かれてこのまま恋愛するんだと思ってた。」
離婚したい演技の相手でなく。
その先の恋愛を考えて、初めて恋のトキメキを教えてくれた人だった。
「…今からでも出来ますよ…。」
七海の眉間に皺が寄った。
しずくは七海の言葉に、ゆっくり首を振った。
悟を愛してしまった。
誰でも恋愛がしたいと思っていた時には戻れない。
離婚をして、受けた傷は他の誰にも癒せるものじゃ無かった。
七海はやはり、目を伏せたしずくに、これ以上何も言わなかった。