第14章 あなたの何者にもなれなかった
悟に期待はしないと言っていても。
結局、一緒に暮らしてそばに居る自分は。
悟にとっては他の人違うと…。
どこかでそんな様に思っていた。
でも結局は悟にとっては、結婚も家庭もしずくも。
他のモノと比べる事も無い様な、同じ存在だった。
悟の家族にも、何者にもなれなかった虚しさは、すぐにその心を動かした。
もうやめよう。
悟と別れて、今度こそは幸せな結婚をしよう。
当たり前の様に笑い合い。
辛い時はその肩を貸せる。
そんな当たり前の事が出来る夫婦になろう。
本当はずっと、悟とそうなりたいと思っていた。
しずくはゆっくりと振り返って悟を見た。
ずるい人だ。
こんな時に目隠ししているから、今どんな顔をしているのか分からない。
しずくはそんな悟を見て、フッと笑った。