第14章 あなたの何者にもなれなかった
あの人は今、どうしているのだろうか。
同じ様に、大切な人を失って。
そして、それが自分が手をかけた。
大切な親友だったのなら。
傑の側で同じ様に座っている悟が浮かんだ。
私はあの人の側に居るべきだったのでは無いか。
そう思ったら、しずくはすぐに実家を飛び出した。
東京に残した悟の元に帰る為に。
「悟。
私はあなたが言う様に、あなたの事を何も分かって居なかった。」
しずくはまだ悟に背を向けている。
だけど悟も。
その肩に触れる事も、声を掛ける事も出来なかった。
当時の光景が嫌でも思い出される。
「私は、あなたと夫婦になれなくても、あなたの家族にはなれていると思ってた。」
もうそれ以上何も言わないでくれ。
話続けるしずくに、悟は目隠しの奥の目をグッと歪めた。