第14章 あなたの何者にもなれなかった
あの日、京都で百鬼夜行を止めていた拓海。
下級の呪術師を助ける為に、特級過呪怨霊に殺されたと、後からその呪術師に聞かされた。
双子の片割れが居なくなった虚無感は、今でもまだ鮮明に覚えていた。
その報告を自宅で受けたしずくは、ただ茫然とリビングのソファに座っていた。
夏油傑を悟が祓ったと、百鬼夜行の終わりの報告を聞いても。
良かったとは到底思わなかった。
しばらくして、家に帰って来た悟が、リビングに入り、しずくに近付いた。
しずくは入って来た悟を見ないで、ずっと一点を見つめていた。
普段なら、帰って来た事に声をかけるのに。
その時のしずくには、そんな余裕すら無かった。
「…… しずく、実家に帰って、拓海くんを見送ってあげるといい…。」
拓海の事は、悟の耳にも届いていた様だ。
しずくは悟の言葉に、スッとソファから立った。