第14章 あなたの何者にもなれなかった
しずくが自分の横に座ったのが分かると、悟は体の向きをしずくに向けた。
「しずく、おいで。」
差し出された腕が、自分の胸の中にこいと言っている。
しずくは争うことはしないで、大人しくその腕の中に収まった。
ぎゅっと悟が自分を抱き締める感触に目を瞑ると、悟の声が聞こえた。
「もう、離婚の理由を教えて。」
悟の言葉に、しずくはゆっくりと目を開けた。
話すつもりは無かった離婚を決めたきっかけ。
今の悟になら話てもいい。
そう思った。
「一緒に行って欲しい所がある。」
しずくが腕の中で発した言葉に、悟はゆっくりと目を瞑った。