第14章 あなたの何者にもなれなかった
「…しずく、本当に居ない?」
「……大丈夫よ…。」
悟はマンションのドアの前に立つと、しずくの背後に立ち、しずくに確認する様に聞いていた。
小百合が部屋の中に居ないか確認しているのだ。
しずくのスマホには、もう家を出たと小百合から連絡があった。
若い彼女に可哀想な事をしてしまった。
しずくは心苦しい気持ちで、部屋のドアを開けた。
悟は部屋の中に入ると、リビングを通り越して、真っ先にしずくの部屋の中に入って行く。
「リビングと僕の部屋ハウスクリーニング頼んで!
後、ベットは買い替えてよね!」
しずくの部屋から、悟の叫び声が聞こえた。
その声を聞きながらしずくはため息を吐いた。
悟に続き、しずくが自分の部屋に入ると、ベットに丸まる様に寝ている悟が目に入った。
しずくは悟を見下ろすと、背中を向けている悟の横に座った。