第12章 お互いのパートナーを決めましょう
『たった1人の僕の奥さん』
その言葉にすらもう応えようともしない様だ。
そして、そのしずくに対して、もう苛立つ事も、かける言葉も無かった。
しずくはこのままこの部屋を出て行くだろう。
悟は横を通り過ぎようとするしずくの腕を掴んだ。
掴まれた腕を見た後に、悟を見上げた。
無表情で、その表情からは何の感情も読み取れない。
「…今日は一段と綺麗だ。」
七海は喜びそうだ。
自分には決して見せないその艶やかな姿で、他の男に会いに行く。
悟はそれだけ言うとしずくの手を離した。
そしてしずくに背を向ける。
離された後も悟の手の感触が残っている様だった。
しずくはその感触を振り払う様に部屋を出た。
もう振り返らなかった。
2人がその背中を見送る事は無かった。