第11章 この最低男
従順だと思っていたら反抗的で。
あざとく何でもこなせそうな顔をして。
簡単に傷付いて涙する。
これが10年過ごしてきたしずくの本当の姿なんだろう。
「しずく…泣かないで。」
しずくの顔にかかっているシーツを取る。
涙でベッタリ付いている髪をかき分け、しずくの濡れている頬に口付けをする。
おかしいな…。
面倒くさがり屋の悟が、こんなに必死に懇願するなんてあり得ない。
「しずく…もう虐めないからこっち向いて…。」
いつまでも顔を見てくれないしずくに悟はお願いする様に言う。
ソッと悟を見ると、目隠しをしていても悲しそうな顔をしているのが分かった。
ー…反省してるのかな…。
あの悟が…。
あり得ないと分かっているのに、悟の顔を見て、しずくの胸がぎゅっとなった。
しずくと目が合うと、悟はしずくにキスをした。