第11章 この最低男
「しずく…泣き止もうよ…。」
優しく聞こえるこの声も知っている。
本当は面倒くさがっている事を。
普段の当たり前の悟の行動に、今日は涙が止まらない。
悟は家に帰ると、自分の部屋にしずくを連れて来た。
ベットにゆっくり置くと、しずくは簡単に悟に背を向ける。
「しずく。」
名前呼んでも、しずくは応えなくて泣き声だけが聞こえる。
悟はギシッと自分もベットの上に乗った。
小さくなって震えて泣いているしずくを抱きしめてみた。
「しずく…ごめんね…。」
もう泣かないで。
さっきより優しく、力無く悟の声が聞こえた。
「…嫌いよ…大嫌い…。」
しずくはどんなに離婚したいと言っていても、こんな風に本気で嫌いとは言わなかったな。
そんな事を考えながら、悟はぎゅっとしずくを抱き締めた。
「うん…ごめんね…。」