第11章 この最低男
しずくが泣きたいだけ泣かせてあげよう。
そう思いながら、硝子は何も言わないでしずくを見守った。
ガラッと扉が開いて、硝子が目を向けると、悟が戻って来ていた。
「しずく帰るよ。」
ツカツカとしずくのベットまで行くと、しずくを抱き上げる。
「おい、五条…。」
硝子が椅子から立ち上がると、悟は硝子に向かって言った。
「僕が家に連れて帰る。
しずくは七海がいい訳?」
しずくは悟の言葉を聞くと、首を振った。
「……七海くんも……悟も嫌だ…。」
こんな姿で七海に会いたく無い。
悟を嫌だと言うが、大人しく抱かれてはいる。
腕の中で泣いているしずくを見た後に、悟は硝子を見た。
邪魔をするなと、悟の顔が言っている。
仕方無く、硝子はそれ以上何も言わなかった。
「うっ…………う……。」
硝子の部屋を出ても、しずくは泣き続けている。