第11章 この最低男
それに溺れた情事は…
楽しかった。
無性に込み上げてくる幸せが心地よかった。
あんな風に悟の好き勝手に抱かれただけなのに。
そんな風に感じて、悟を好きだと思えるほど。
悟の言葉が本気だと錯覚して、彼の愛を望んでしまうほど。
『僕と離婚したかったら、僕を好きになるのが1番手っ取り早いって言ってんだよ。』
好きになったら絶対に離れる相手だと。
1番良く分かっているのは自分なのに。
「…くっ…うぅ……。」
何故普通に離婚してくれないのだろう。
こんなにも しずくを傷付けたいほど、憎んでいるのだろうか。
悟が離婚話で傷付く事なんて何も無いくせに。
しずくの代わりに順応な女の人が現れたら、それでいいと簡単に思えるくせに。
結局こうして泣いて抵抗するしか出来ない自分が、1番惨めで嫌だった。