第11章 この最低男
「七海、思い切りぶん殴っていい?」
「ご遠慮願します…まだ死にたく無いので。」
何がこんなに苛々するのだろう。
全て自分が提示した内容だった。
七海は悟の話が終わると、そのまま背を向けた。
そうだ、この七海の背中に蹴りを入れるには、自分が願った結末過ぎる。
そう思って、悟はそのまま七海を見送った。
「うっ…くっ……。」
硝子のお陰で、変に改良された体は治った。
なのに しずくはまだ泣いていた。
硝子はそんな しずくに何も言わないで、ただその姿を見ているだけだった。
これは10年前に五条を諭さなかった、自分の責任でもあるのだろうか。
痛々しい しずくの姿を見て、硝子はそんな事を思った。
何が悲しくて泣いているのか。
そんな事、 しずく自身も分からなかった。
悟が しずくが好きだと言いながら しずくを抱いた。
しずくはそれに応える様に、悟に愛を伝えて抱かれた。