第11章 この最低男
悟は結局、しずくを残して部屋から出て行った。
またしずくの泣き落としにため息が出る。
自分以外の男と恋愛をするしずくに、少し腹を立てただけだった。
その苛立ちをしずくにぶつけるのは、それほど諭されるモノなのだろうか。
そんな事を考えて歩いていたら、ちょうど目の前から七海が来た。
硝子に呼ばれて今からしずくの元へ行くのだろうか。
泣いて弱っている裸のしずくの元に。
「…おはようございます。」
「今から、しずくの所?」
「?」
悟の問いかけに、七海は不思議そうな顔をした。
どうやらまだ硝子から連絡は来ていない様だ。
「……しずくの愛人やるって?」
「…ああ…、そんな話はありますね…。」
悪びれもしないで答える七海に、胸がモヤっとした。
七海に近付いて、悟は耳元で話した。
「僕、しずくと離婚しないけど、それでいいの?」
ずっと愛人のままだと、悟は七海に牽制している様だ。