第11章 この最低男
何故ここで七海の名前が出るのだろう。
「は?旦那が居るのに、愛人を呼ぶなんておかしいだろう。」
そんな悟の言葉に、硝子は何を言っているかと言う顔をする。
そんな硝子の表情を見て、悟は硝子の手の先に居るしずくを見た。
シーツに包まり、嗚咽を出しながら声を出して泣いている。
そんなしずくの状態を作ったのは、紛れも無く自分だった。
「……しずくに確認するか?」
硝子はギロッと悟を見て聞いた。
悟の耳に、しずくの嗚咽だけが聞こえる。
「……もうやだ…悟なんて顔も見たく無い…。」
シーツの中から確かにしずくの声がした。
「…嫌い……大嫌い…。」
嗚咽に交えて聞こえるしずくの言葉に、悟は言葉を失った。
「…出て行けって…。」
きっと悟が居たらしずくは泣き止まない。
硝子はそう思って、悟を諭す様に言った。