第10章 これは愛ではありません
七海の提案に、しずくは驚いた様に目を見開いた。
言葉の意味を理解すると、どんどん顔が赤くなる。
七海からこんな提案をされるのを、想像すらしていなかった様だ。
これが演技というなら、悟も七海も全然分からない。
まるで付き合いたての恋人に、初めて夜を誘われている様に、胸が高鳴った。
「……ええ…と…。」
しずくはチラッと握られている手を見た。
凄くドキドキして、心臓が痛いくらいなのに。
チラッと見た七海の笑顔が心地よかった。
まるで本当に恋愛をしているかの様な高鳴りに。
しずくはゆっくりと頷いた。
「おかえりなさい…。」
悟が帰ってきた時に、しずくはリビングに居た。
珍しい光景だが、しずくが何を考えているか手に取るように分かる。
最近、リビングに居なかったら、悟はしずくの部屋に来るからだ。
そこからなし崩しに抱かれるのを回避する為だろう。