第10章 これは愛ではありません
『しずくは…染まりやすい…。』
硝子が自分に言った言葉を思い出す。
実際に、しずくを落としたいからって、そんな簡単には出来ないだろうと思っていた。
何せ、旦那はあの五条悟なのだから。
でも数回会って、こうして目の前で目を伏せるしずくを見ると。
意外とイケそうだ。
自分の奥さんと恋愛をしてこなかった悟に感謝出来る。
お陰で、恋愛に関して初心なしずくを、簡単に手に入れられそうだ。
ジッと見ているだけで、顔を赤らめて直視出来ない。
まるで10代の様に新鮮な反応だ。
それがわざとらしく感じないのは、彼女の表情が本当に困惑しているのが分かるからだ。
七海はテーブルの上に置いてあるしずくの手を握った。
それだけのスキンシップでも、体を硬直させて不安そうに七海を見上げる。
七海はゆっくりと笑みを作ると、しずくに優しく言った。
「そろそろ、夜に会いましょうか。」