第10章 これは愛ではありません
胸を抑えて、何か考えている悟に、硝子が気が付いた。
「どうした?」
「… しずくが七海と居ると思うと、胸がぎゅっとなって、吐き気がする。」
「ただの不整脈だ、自分で反転で直せ。」
悟は言われた様に反転術式を使うが、治らない不整脈に首をかしげる。
(お前のそれは不整脈で無くてはならない。)
硝子は冷たい目で悟を見ながら思った。
今さらしずくに関心がある様な。
そんな残酷な素振りなんて絶対しずくに見せるな。
そう呪いを込めて、硝子は悟を見守った。
「そろそろ五条さんが気付いたでしょうね。」
目の前に居るしずくに、コーヒーを飲みながら七海は言った。
『協力してやる。』
硝子がそう言った協力者の七海を見ながら、しずくはため息を吐いた。
七海と恋人関係を偽造する。
硝子の作戦にしずくは不安だった。