第10章 これは愛ではありません
硝子は今頃しずくと会っているだろう男を思い浮かべて、満足そうに笑った。
「誰?」
悟の不機嫌そうな声に、硝子は再び悟を見る。
(…面白い顔出来るじゃ無いか…。)
硝子が見た悟の顔は、先程までのふざけた態度では無くて、明らかに怒りを溜めている。
「…七海、知ってた?あの子昔からしずくが好きだったよ。」
「っ!まさかの七海?」
七海の名前を聞いても、彼がしずくを口説くなんて全く想像出来ない。
「……はぁ、普通先輩の奥さん狙うか?」
悟はため息を吐きながらスマホを出した。
「邪魔するなよ。」
硝子はその悟の手をバチっと叩く。
この様子では今もしずくと七海は会っているようだ。
最近出掛けて化粧をしていたので、何かあるとは思っていた、
(しずくが七海と会っている?)
ズクンッと悟の胸が疼いて、思わず胸を抑えた。