第2章 離婚して下さい
しずくはそのまま席を立つと自分の部屋に入って行った。
そのしずくの後ろ姿を見て、悟はフッと笑った。
面白かった。
10年間一緒に過ごしても、今日の様なしずくの表情、口調を聞いた事が無かった。
そして、自分の妻が夫に対してどんな評価をしているのか初めて知った。
SEXが満足出来なかったと。
そう面と言われて多少なり自尊心は傷付けられた。
でもそれだけだった。
彼女が愛人が欲しいと言っても、その言葉に動かされる心が無かった。
だからこそ自分がこれからすべき事はすぐに分かった。
甘やかしてきた奥様に、現実を教えてあげないといけない様だ。
恋をしたい。
情欲に身を任せたSEXがしたいと。
それがどんなに危険で甘い誘惑なのかを。
それが五条悟の妻という肩書きで、どんなに困難な事かを。
「……少し痛い目に合わないと分からない様だ……。」
悟はクイッと目隠しを外した。
平凡で退屈だった夫婦生活が少しは楽しくなりそうだ。
そう思ってスクッと立つと、悟もまた自分の部屋に入って行った。