第2章 離婚して下さい
「…今さら父親になって、家族ごっこがしたいのか聞いてるのよ…悟。」
目の前の女は本当に10年連れ添った妻なのだろうか。
確かに自分達が夫婦だった時間は、この10年皆無だった様だ。
初めて見るしずくの表情に笑みを浮かべながら、悟はそう思った。
「…恋愛ってどうするか知ってるの?」
馬鹿にした様に笑って言う悟に、しずくは明らかにムッとしている。
「結婚したのがあなたなんだから、どんな男にでもトキメキそうだわ。」
フィッと顔を横に向けてしずくは言った。
…そんなに僕は酷い旦那だったっけ…。
ここまでしずくが言うほどの『何か』をしずくにした覚えは無かった。
何もしなかった。
それがこの10年の答えなのだが、それが特に悪かったとは思わなかった。
「ふーん……頑張って。」
「💢」
まるでしずくには出来ないだろうとたかを括った様に悟は言った。