第8章 私の初恋でした
自分から離れたしずくを、悟は冷たい目で見下ろしていた。
その悟の表情に、ゾッと背筋が凍った。
今度は正面から悟の手がしずくの顔に触れた。
スッとしずくの頬を撫でて、首筋から肩に手を下ろす。
「しずく、僕たちは結婚したんだ。」
その意味を分かっているのか、悟はそうしずくに聞いている。
「……なんで私だったんですか?」
少し唇を震わせて、しずくは悟に聞いた。
何で?一目惚れだとでも言われたいのだろうか。
しずくだって、この結婚が愛だなんて思っていないだろう。
事務的なお見合いで、お互い出会っただけじゃないか。
それでもしずくは、自分だった理由を見つけたそうだった。
「しずくが1番『僕に合ってる』と思ったから。」
そう言った悟からは、何の感情も見えなかった。
スッと腰に手が回り、悟はそのまましずくをベットに導いた。