第8章 私の初恋でした
「…………。」
そんなしずくを見て、悟の目がスッと細くなった。
少し見誤った部分はあった様だ。
何も知らない女を、丁寧に手取り足取り段取りよく相手をする趣味は無い。
「しずくおいで、君の部屋もあるよ。」
「…私の部屋?」
その言葉にしずくは余計困惑した。
結婚したら夫婦は同じ部屋で過ごすと思っていた。
悟に案内されて、『自分の部屋』だと言うそこを見に行っても、何の感情も湧かなかった。
ベットにクローゼット、鏡台まで揃っていた。
付いているカーテンを見ても、しずくの趣味では無い。
この部屋に自分が選んだ物は何も無かった。
誰が用意したんだろうか。
新居も、ソファも家具も全部用意されていて、ここが自分の家だと言われても、まるで他人の家の様だった。
ボーッとその部屋を見ていると、悟の手が後ろからしずくの首筋を撫でた。
ビクッと体が大きく反応して、思わず体を悟から離した。