第8章 私の初恋でした
彼の手を取ってみた。
そっとおいた手を悟が握った。
ああ、私はこの人の花嫁になるんだ。
初めて握った悟の手はとても暖かくて、2人で初めて手を取り合って歩いたあの廊下は、今でも忘れない。
結婚式はあっという間だった。
今なら分かる。
めんどくさがりの悟がさっさと終わらせたのだろう。
披露宴もしなくて、式を終えてしずくは悟に連れられて新居に初めて足を運んだ。
10年間過ごしているあのマンションだ。
ここで今日から五条悟と暮らすのだ。
部屋に入る事を戸惑って、リビングのドアの前で体が固まっていた。
「入れば?」
悟はしずくと違って、平然としてどんどん部屋の中に入っていく。
やっぱり何か違う。
結婚式でさえ2度目の顔合わせなのに、そのまま一緒に住む事に戸惑いしかない。
「……五条さん…やっぱり…。」
しずくは顔を青くしてぎゅっと両手を握った。