第8章 私の初恋でした
その綺麗な自分の花嫁衣装を見て、何故かしずくは悟を思い出した。
何の非の打ち所がない綺麗な花嫁衣装。
ただそこにあるだけで、両親も喜んでいる。
結婚とはこう言うモノなのだろうか。
悟にプロポーズされてから、粛々と準備だけがされていく。
両親が喜んでいるのを見て、これで正しいのだと思いながらも。
何故か心に隙間が出来ている。
あの人はこの衣装を選んだのだろうか。
その時には少しだけでも私を思い出してくれたのだろうか。
分からない。
結婚しようと言った悟が、何も分からなかった。
「五条悟って言うのは、随分と傲慢なんだな。」
「……拓海……。」
ボーッと花嫁衣装を見ていたしずくの後ろから声が聞こえた。
しずくの双子の兄の『拓海』だった。
「自分から結婚したいって言ってきたのに、本人は来ないで物だけ送りつけてきて。」
拓海の言葉で、しずくは何故今自分がこんなに寂しいのか分かった。