第8章 私の初恋でした
悟は伺うなんてしなかった。
まるで、しずくが断らないと決めていたかの様に。
それでも、その堂々とした悟の姿は、とても凛々しくて。
その容姿から、何処かの王子様にプロポーズをされた錯覚さえ覚えた。
あのガラス玉の様な目に見つめられたら、断る女の子なんていないんじゃ無いか。
悟は、頷いたしずくを見ると、満足そうに部屋から出て行った。
しばらくは悟の出て行った窓をボーッと見ていた。
(私が、五条悟と結婚する…。)
青天の霹靂の様だった。
その事実に胸をときめかせて、しずくは目を伏せた。
今なら分かる。
悟はしずくを好きでプロポーズしたのでは無い。
そんな事も分からないほど、まだ幼かった。
それから結婚式まで2ヶ月。
悟と会う事も無いまま、結婚式の準備は進んだ。
「しずく、五条家からとても綺麗な白無垢が届いたわ。」