第8章 私の初恋でした
だから、自分個人の後継ぎだかとか、五条家の繁栄だとかは、その目標に比べれば優先される事項では無い。
悟の子供で無くても、相伝術式は受け継がれる。
術式とはそう言うモノだ。
(くだらない…早く終わらそう…。)
悟は次々と顔を合わせる女の子達を見ながら、そんな事を考えていた。
誰でもいい。
ただ側で静かに過ごして、部屋に飾られる花の様に美しく。
ただそこに居ればいい。
当たり障りなく過ごせる女…。
そうそんな女がいい。
主張が強い女の子達は初めの一言から相手にしなかった。
服装、振舞い、そして悟への目線。
話をしなくてもハッキリと『違う』と分かっていた。
そんな悟だから、しずくが目に入ったのは当たり前だった。
この会場の中で唯一、その存在をアピールしない。
だけど、勝手に気が付いてしまうほど、美しく姿勢良くただそこに居るだけの女。