第8章 私の初恋でした
ああ、本当にくだらない時間だ。
悟は自身の嫁候補を選ぶのに、わざわざお見合いさせられる。
当主になった事を後悔しそうだ。
強ければ何だっていいじゃないか。
そう思う反面、絶対に手に入れたかった呪術界での権力と地位。
そうしなければ誰も助けられないし、腐ったこの呪術界で将来有望な若手を育てる事も出来ない。
そうー…例えば伏黒恵ー。
彼を五条家で保護するにも、禪院家とのイザコザはあった。
『好きにしろ。』
禪院直哉との最後の言葉を全うしたい訳でもない。
『津美紀が幸せならいい。』
あの小さな体にある、大きすぎる守るべき者。
恵に守れるだけの力を付けてあげたい。
そんな小さな気持ちから、悟の大きな野望の架け橋になった。
もう2度と、残酷なこの世界で、傑の様に壊れてしまう者が現れない様に。
自分が強いだけではダメな事を、充分に分かった。