第7章 あなたの婚約者です
「…………。」
流石に誰も何も発しなくなってしまった。
悟までも黙ってしまったので、しずくはチラッと悟を見た。
「……あの……何で結婚したんですか?」
そう思って当然だろう…。
しずくはふう…とため息を吐いた。
「……悟となら、穏やかな夫婦生活を過ごせると思ったのよ…。」
そうポツリと言ったしずくを悟は横目で見た。
「そして実際とても穏やかだったわ…煩わしい事も無くて、自分の好きな事だけを毎日出来て……。
離婚したいのは……私のわがままよ……。」
激しい情慕の感情も無ければ、酷く喧嘩をした記憶も無い。
自分に関心が無い悟の横で、その時間はただ過ぎて行った。
悟は悟なりにしずくに関心を寄せなくても、しずくの生活を崩そうとはしなかった。
ただそこにいるしずくを受け入れていた。
それだけでいいと思えていた時期は確かにあったのだから。