第7章 あなたの婚約者です
まぁ、何か企んでいるとは思っていたが。
「…ご苦労様…。」
悟は呆れた顔をしながらしずくに言った。
「…まさか、部屋は別々じゃ無いよね…。」
しずくの後を付いて行きながら旅館の者にフロントに案内される。
受付で渡された鍵は1つだ。
「…一緒よ…だけど…。」
しずくは背の高い悟の耳元に近付く為に背伸びをした。
「一緒に過ごすのは私とは限らないけど…。」
優しく甘い声が悟の耳元に響いた。
悟はしずくが離れると、ハッと笑った。
「そこまで奥さんにお願いされちゃあ、ご期待に添えないとね…。」
とても虚しい気持ちになる。
彼女との関係を修復しようとすればするほど、胸を抉られる様な攻撃を受ける。
離婚したいだけじゃなくて、しずくに恨まれている気分だ。
ここまでしずくの気持ちが離れていた事に、気にもとめないで過ごしていた代償を今払っているのだろう。